小耳症-耳の穴は必要?-

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小耳症のお子さまをもつご両親からよく聞かれる質問があります。

  • 耳の穴を作る手術は何歳からできますか?
  • Dr.パクチョルも耳の穴を作る手術を行っていますか?
  • 耳が聞こえるようになるには耳の穴は必要ですよね?

結論から申し上げますと、もし片耳だけが小耳症の場合、耳の穴を作る手術はお勧めしません。

一番の理由は、耳の穴を作る手術を行う耳鼻咽喉科では、聴力の改善を目的とするため、手術後の耳の外観については考慮されないことが多いためです。

耳の穴を開ける手術をした患者様

これらは、耳の穴を作る手術を行った方たちの写真ですが、耳鼻咽喉科医の目線で見ると手術は非常にうまくいったと言えます。しかし形成外科医の目線から見ると、やはり外観について考えてしまいます。

聴力の改善が目的の場合、一般的に耳の穴は通常の位置より高く、サイズは大きめに作られるため、再建手術によって耳の形そのものは自然に仕上がったとしても、非正常な位置にできてしまった大きな穴が、全体の外観をアンバランスにしてしまいます。

赤いライン:耳の穴が作られる位置
写真左:耳の穴を開けずに再建手術を行った耳
写真中:耳の穴を開けて再建手術を行った耳
写真右:再建後、不自然な位置に存在する耳の穴

この写真は、両耳が小耳症の患者様で、片方の耳のみ穴を開けており、両耳の再建手術を行った例です。「外観」という点でみると、耳の穴を開けずに再建を行った左側の写真が、より自然な耳にに見えるかと思います。

また、小耳症の一次手術は側頭筋膜を使って行われることが一般的ですが、この方法は頭部に切開の傷痕が残ってしまうため、Dr.パクチョルは傷痕を最小限に抑えるため、独自の手術方法で再建手術を行っています。

しかし、耳の穴の手術を受けた方は周囲が損傷している可能性が高く、Dr.パクチョルの手術方法を採用することが困難になり、側頭筋膜を使用した手術を行うしか選択肢がなくなってしまいます。言い換えると、耳が不自然になるだけでなく、頭部にも新たな傷痕が生じるということです。

それだけではありません。

耳の穴を作るためには、側頭部の骨に穴を開けて皮膚移植を行うことになるのですが、手術後、粘液が発生して炎症が起きるという副作用が報告されています。炎症が重度の場合、再建した耳にも影響を与えることがあるため、この症状が発生すると、耳鼻咽喉科に通い治療を続ければならなくなります。

耳の穴がないことによって聴力が著しく低く、言語発達遅滞や脳の発達にも影響を及ぼすような場合には、外観的な耳の形より、聴力を補強できる方法(耳の穴の手術や骨伝導補聴器など)を優先的に検討する方が良いでしょう。

しかし、片耳だけが小耳症の場合、冒頭でも述べたように形成外科医の立場として耳の穴を開ける手術はあまりお勧めできません。

小耳症の方のほとんどは、通常、外耳道だけでなく鼓膜や耳小骨なども未発達ですが、耳の穴の手術では鼓膜や耳小骨まで作ることができないため、外耳道を中心に作ることになります。これは、耳の穴を開ける手術を行っても本来の耳の機能を全て改善できるわけではないことを意味します。

見た目の満足度も下がり、耳の機能も改善されず、場合によっては粘液による副作用によって耳鼻咽喉科にも通い続けることになる… 

全てにおいてにストレスを抱える結果になるのであれば、片耳だけが小耳症の場合は再建手術に集中し、より自然な耳を手に入れることが子供にとってもより良い選択なのではないかと思うのです。

現在は、骨伝導補聴器だけでも通常の50%程度は聞こえるため、先進国では両耳が小耳症であっても耳の穴を作る手術ではなく、骨伝導補聴器を選択する方が多い傾向があります。

当院では、見た目も聴力も満足できる方法として ”小耳症再建手術で自然な耳を手に入れ、聴力は骨伝導補聴器で補う”ことをお勧めしています。

もちろん、最終的な判断は保護者の方や患者様ご本人が決めることになりますので、耳鼻咽喉科の先生と形成外科の先生の両方を訪ね、慎重に検討してみてください^^