小耳症の患者様やご家族にとって、手術の方法を決めることは大きな悩みの種かと思います。それぞれの手術には長所と短所があり、一度下した決断が未来を左右することになるからです。
小耳症再建は主に、自身の肋軟骨を使用する方法、人工骨(メドポア)を使用する方法、そしてシリコンを使用する方法と、3つの選択肢があります。
それぞれの特徴についてご紹介したいと思いますので、手術方法についてお悩みの方は参考にしてみてください。
Ⅰ. 肋軟骨を使用した再建

形成外科の教科書には、小耳症再建は肋軟骨を使用すると定説されています。
この方法は、1958年に米国のDr. Tanzerによって開発された後、多くの発展を経て現在に至っています。
他の再建手術と比べても、仕上がりが自然で、安定性もあり、将来的にも問題を起こす可能性も低いというメリットがあります。短所を挙げるとすると
- 担当医師の技術力
まだ経験が浅い医師や、技術が伴わない医師のもとで手術を行うと、結果の満足度が下がるだけでなく、時間の経過と共に形が崩れてしまうケースがある。 - 手術の適齢期
肋軟骨を採取するこの方法は、適齢期以前に手術を行うと、成長過程で胸部が歪むという副作用が起こる可能性が高くなります。肋軟骨がある程度成長する9歳~12歳頃まで待つ必要があるため、早期に治療を望む方はもどかしく感じるでしょう。※病院によって定めている適齢期は異なります。 - 手術の結果
肋軟骨は耳介軟骨のような柔軟性がなく、形が容易に崩れないよう設計されているため、正常な耳に比べて、見た目は厚く、触感は固いという特徴があります。
Ⅱ. 人工骨(メドポア)を使用した再建

この再建手術の方法は、1993年に米国のDr. Welliszが初めて試みましたが、挿入したフレームが皮膚の外に露出したり、感染症を引き起こすなど、多くの副作用が発生しました。
その後、様々な改善が加わったことで副作用も減り、肋軟骨を使用した手術に比べると習得が簡単という点から、一部の医師がこの方法を使用しています。
肋軟骨を使用した手術は、耳だけでなく胸部にも手術の影響が及ぶため、痛みも少なく、早く治療を行える(満6歳以降で手術が可能)というメリットに惹かれ、興味を持つ方が増えるようになりました。
しかし、メドポアにも短所があります。
- 手術後の炎症や感染症
初期に比べて改善されたとはいえ、今でも炎症、感染症、膿などの副作用を訴える方がいらっしゃいます。その事実から、人工骨で再建した耳が20~30年以上、長期的に維持できる可能性は高くないと言えるでしょう。 - 衝撃に弱い
人工骨は柔軟性がないため、再建した耳は肋軟骨よりも固く、衝撃を受けると壊れてしまい耳の形が崩れてしまうことあります。
Ⅲ. シリコンを使用した再建、装着

シリコンを使用する場合、他の手術のようにフレームを作成して埋める方法だけでなく、装着するという選択肢もあります。
- シリコンで作成したフレームを挿入する方法
1966年に米国で考案され、日本でも25年ほど扱われてきましたが、フレームが皮膚の外への露出したり、感染症や形が崩れるなどの副作用が多発したため、現在この方法は禁止されています。 - チタンインプラントを骨に打ち込みシリコンで作成した耳を装着する方法1979年にスウェーデンで考案され、世界各国で約10年ほど取り扱いが試みられましたが、歯のインプラントとは異なり、皮膚に炎症を起こし粘液が生じる副作用が報告されたため、現在ではほとんど取り扱われていません。また、シリコンで作成された耳は、時間の経過と共に変色するという短所も持ち合わせています。
- シリコンで作成した耳を接着剤で直接付着する方法
シリコンは通常の柔らかさに近い耳を作ることができますが、上記でも述べた通り時間が経つと変色してしまうため、2年おきに取り換える必要があります。これを長期間くり返すと、接着剤によって接触性皮膚炎が起きてしまうため、一時的に使用することはあっても、この方法で生涯ずっと過ごすことには不可能といえます。
現在の医療技術では、触感も、柔軟性も、機能も、見た目も、全てが完璧な耳を再建することはまだ不可能な領域です。それでも、手術を行うにはどれか一つの方法を選択をしなければなりません。それぞれの長所と短所をじっくりと考えたうえで
(1)生涯安定的な耳を得るためには肋軟骨を
(2)長期的な安定性より少しでも早い手術を望む場合には人工骨を
(3)すぐに手術受けることが難しく、短期的に耳がある状態を必要とする場合はシリコンで作成した耳の装着を
お勧めいたします。